J LIGHTNING
INTERVIEW

3/4

――M6「Flash」は、差し込むようなシャープなギターリフが印象的です。
これは曲がまず出来上がったんですけど、純粋に、ミディアムテンポでパワフルなグルーヴ感がある曲をつくりたいな、というのがありました。そのグルーヴを崩さないようなメロディーを付けたり、言葉を付けたりして、遊んだ要素もすごく強い曲で。その作業はとても楽しかったし、シンプルなんですけどパンチのある、すごくカッコいい曲になったと思いますね。
――閃光(「Flash」)というワードもそうですし、どの曲にも光のイメージが一貫していて、アルバムタイトルは『LIGHTNING』ということで、稲妻とか稲光を意味していますね。このキーワードはどの段階で設定なさったんでしょうか?
まさに先ほど話していた通り、こういう状況下でアルバムをつくっていく中で、自分のルーツ、自分にとっての音楽って何だろう?と考えるタイミングに今まで以上になったんですね。元を返せば、自分が楽器を持つようになる前、初めてロックミュージックを聴いた時に受けた衝撃ってまさに、稲妻がこの身体を突き抜けたようなインパクトだったと思うんですよね。それがきっかけとなって今もこうしているわけで。同時に自分がつくりあげた音楽が誰かのそんな稲妻であってほしいってことと、自分自身にとっても未だそういったインパクトを残す音楽をつくっていきたいし、Jってやつが作る音はそういう音楽なんだ!という想いを表したつもりです。それから、初期衝動みたいなものも表しているつもりで。そういうものにフォーカスを当てられるアルバムにしたいな、と思ってました。
――射抜くような衝撃性と、キャリアを重ねて熟練なさっていくこととは、両立するのが難しいことかもしれないと思うですが、Jさんはその離れ業を成し遂げていらっしゃいます。それは難しいことではありませんか?
たしかに、やればやるほど刺激に慣れてはいくし、得れば得るほど、そういった刺激のようなものは少なくなってはいくんですけれども。でも、一つだけ言えるのは……今回のアルバムづくりはとても楽しかったんですよね。たしかに大変ではあったんですけれど、いまだにやっぱり“カッコいい”とか、言葉になんないぐらいドキドキするような、そういったものを追い求めているからなのかな?って。まだまだですけれども当然昔よりは楽器も上手く弾ける様にはなっていくし、分かったような顔をすることもできるかもしれないけど。ただ、“それだけじゃ語れないもの”がロックミュージックだと思うし。キャリアとか、そんなものを木端微塵にするのがロックミュージックだったはずだしね。そんなふうに考えてみると、すぐそこに答えはあるような気はするし。自分自身がそういう音楽自体になる、というか、それを恐れないでいることが大事なのかな?と思います。
――M9「Over and Over」とM10 「CHANGE」はアンセムとしての強度が凄まじいです。この2曲は終盤に出来てきたんでしょうか? それとも他の曲と同じぐらいの時期に生まれたのですか?
同じような時期でしたね。アルバムを構成する時にいろいろな形を探っていく中で、「あぁ、この場所がいいかな」なんていうふうに思った曲なんですよね。
――なるほど。「Over and Over」のサビは強烈なフックになっています。新しさもあると同時に“ザ・ Jさん”という安定感も感じました。出来た時の手応えはどうでしたか?
97年にソロを始めた時、自分自身のスタイルとして、ギター2本とドラムとベースというシンプルな編成でうねるような曲を、と追い掛けていた時の匂いがすごくしますね。頭の中で当時の、まさにレコーディング風景を思い出すような。それでいて、この2021年の自分自身の最新型のフレイヴァーをどんどん乗せていくこともできた曲でした。
――原点でありつつ最先端でもある、という感じですかね。
そうですね。ソロを始めた当初は“歌う”ということの経験値もやはり今のようにはなかったし、探っている部分もたくさんあったし。だけど、そこからもう25年近く経って、自分が思い描いたようなメロディーや歌の世界観をしっかりと描けるようになった部分もあるし。そこの違いみたいなものも自分自身でも感じられたし、面白かったですね。
――サビの部分は歌とベースのフレーズがデュエットしているような、歌が2つあるような感じがしました。
まさにそういう自分の中から溢れ出るようなメロディー、旋律を形にしていった部分はすごくあって。歌とベースが一つになっている部分はあるかもしれないですね。
――今回ヴォーカルが前面に出ている印象を受けたのですが、いつもとはミックスの仕方が違ったりもするのでしょうか?
いや、特にはないんですけど。自分自身の中で、その曲に対してのヴォーカルアプローチというのは以前とはやっぱり変わった気はしますね。メロディーの取り方も、言葉の置き方も、“より届くように、より響くように”という感覚であったような気はします。そういう意味では、レコーディングも楽しかったですよ。「こうじゃない、ここだ!」というのが、感覚的にですけれども、歌に対しても明確に見えていたので、そこに向かって行くだけだったから。昔はヴォーカルレコーディングが上手くいかずに何度も何度もトライしてた部分や曲もあったかもしれないけど、今回は一切そういうことはなかったし。
――ヴォーカリストとしての25周年を目前とした進化を感じるエピドートですね。ちなみにJさんは、ヴォーカルレコーディング時のOKテイクのジャッジは、ご自身だけでなさるのですか?
自分ですね。
――昔からずっとそうなんですか?
うん、そうですね。ベースもそうなんですけど、タッチってあるんですよ。音階的に合っていたとしても、その音符がどういう表情を持っているか?というのはまた別で、やっぱり想いがあった上でそれを鳴らしているから。ヴォーカルも同じで、例えば「あ、この口の開き方で録れちゃったけど、こうじゃないな」とかいうのもあるので、それは自分自身にしか分からないところがあるので、OKテイクはもちろん自分で決めています。
――素敵です。LUNA SEAにおいても、セカンドヴォイスとしての存在感が増しておられますよね。
ソロで始動してこれだけ時間が経って、ソロのライヴでは“歌う”ということをずっとやってきているので、それはあるかも。ヴォーカリストという視点からライヴというものを見ることもできるようになってきていると思うし、それはサウンドメイクも含めてですけども。そういう意味では、RYUICHIやバンドへの力になれていればいいなとは思いますね。
――そして、「CHANGE」はアルバムを締め括るにふさわしいナンバーで、<You can change the world>という力強い明確なフレーズがあります。
日々大変な想いをしている時間がここ2年間ずっと続いてきていると思うし、そういった中で、ロックミュージック、音楽の可能性はより強くなっていった気がするんです。そういった中で、仲間たちにメッセージできればという想い、そんな自分の気持ちを表現できればいいな、なんて思いながらつくっていた曲です。実際にアルバムを聴いて「よし!」と思ってもらえたら最高ですね。今回のアルバムはそれぞれ1曲1曲に熱い想いは当然あるんですけれど、一つだけ忘れてはいけないのは、“音楽を楽しむ”っていうこと。楽しむことを楽しむっていうのかな? 元々音楽というのは、楽しむものだと思うから。純粋に、シンプルに捉えてもらって構わないし、このアルバムを手に取ってもらってフッと何かに気付いたり、何かのヒントを見つけたりしてくれたらいいですよね。そういう意味で、この曲の最後の言葉は、みんなに当てはまってくれるといいなと思う。“世界”というのは何も馬鹿デカいスケールのものを言っているわけではなくて。自分自身の身の周りに、傍に存在するものにだって当てはまると思うし。自分の意志を強く持つことの勇気だとか、そういったものを取り戻すこと、思い出すこと。元々みんなが持ってるんだからね。
――教える、与えるというのではなく、音楽によって各々が気付くことができるんですね。
うん。そういうことに気付いてもらえる曲になればいいなと想いを込めた曲でありつつも、純粋にメロディーや曲の気持ち良さを追っ掛けていた曲でもあります。